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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「……嘘」

 叡心先生と比べちゃダメだとわかっている。でも、どうしたって比べてしまう。
 叡心先生への愛と、翔吾くんへの好意は、同等のものなのか、と自問してしまう。
 答えは、否。
 明白だ。

 でも、翔吾くんがいなくなってしまうかもしれないと考えたとき、確かに胸が痛かった。ショッピングモールではぐれたときに不安になり、再会したときに安堵し、涙が流れたのは、事実だ。

 あの気持ちに名前をつける必要がある。
 あれは、何?
 あれは、何なの?

 私は、翔吾くんにどんな感情を、抱いているの?

 好きか嫌いかで言えば、好き。
 愛しているか愛していないかで言えば、愛してはいない。
 でも、きっと、そんな簡単なものじゃない。
 そんな簡単に解き明かせる問題じゃない。

 私は、どうすればいいんだろう。
 どうすれば。

 どうすれば、みんな納得してくれる関係になれるのだろう。
 どうすれば、私が納得できる関係になれるのだろう。

 どうすれば、精液だけを提供してもらえるのだろう。

 セックスに「好き」はいらないと思っていた。
 本気になっちゃいけないし、本気にさせてもいけない。
 それじゃダメなの?
 ……ダメだから、健吾くんにも水森さんにも咎められるのだ。きっと。

 私は。

 叡心先生、私は――。

 先生以外の人を、好きになってもいいんですか?

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