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サキュバスちゃんの純情《長編》
第9章 記憶と記録

 ミチさんの白い肌に吸い付きたい。
 ミチさんの肌はどれほど滑らかで、どれほど熱を持っているのか、知りたい。
 ミチさんを笑わせたい。
 絵の中でなく、実物に触れたい。
 私を見て欲しい。
 私を慕って欲しい。
 夜毎、想いが募る。


 狂ってしまいそうだ。
 いっそ、狂ってしまいたい。
 こんな激しい恋情など、なくなってしまえばいい。
 どんなに身を焦がしても、ミチさんは私のものにはならない。
 求めても、得られないのだ。


 叡心の家に行く。そして、着崩れた着物のまま、微動だにせず縁側に横たわるミチさんと、絵を描き続ける叡心の姿を見つける。
 美しい光景だった。
 情事のあとか、それとも、その直前か。判断はできなかったが、美しかった。
 美しい女が欲しい。
 いや、ミチさんが欲しい。
 私なんかが手を出してはいけないのだと思えば思うほど、苦しい。嫉妬で狂いそうだ。いや、もう狂っているのか。
 明日、叡心に話をしよう。


 叡心を診療所に呼び寄せ、話をする。
 衣食住と絵の買い取りを約束する代わり、私の言うことには絶対に従ってもらう、と。
 画廊を通さない分、叡心の実入りも太くなる。どんな絵であっても文句はつけないと伝えたら、叡心は喜んでいた。
 叡心は二つ返事で了承した。
 準備は整った。

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