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サキュバスちゃんの純情《長編》
第9章 記憶と記録
でもね、叡心先生。私、先生と一緒なら、どこへでも行けたのに。どこへ行っても、良かったのに。
絵のためなら、私一人を町から追い出してくれても、構わなかったのに。手放してくれても良かったのに。
私は結局、叡心先生を苦しめ、悩ませる存在でしかなかった。
愛していたのに、それだけではどうにもならなかった。
二人で沼に落ち、先生だけが沈んでしまった。
どうすれば、叡心先生を助けられただろう――百年の中で得た答えは、簡単だった。
私が、愛を手放せば良かったのだ。
私が、町と叡心先生から離れてしまえば良かったのだ。
だから、誰かの心に寄り添うことを諦めたのに。
誰かを愛することを諦めたのに。
百年たっても、うまく、いかない。