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サキュバスちゃんの純情《長編》
第9章 記憶と記録
昼、縁側に座るミチさんを見つけ、声をかけようとした。かけられなかった。
叡心の絵から抜け出てきたかのように美しい女が、物憂げに庭を眺めていた。叡心なら迷わず絵筆を取り、妻を描くだろう。その絵を、見てみたかった。
愚かなことをした。
なぜ、私は叡心からミチさんを奪い、ミチさんから叡心を奪ったのか。
なぜ、絵の中の女に恋い焦がれた、ただの愚かな男のままでいられなかったのか。
なぜ、奪った。
なぜ、私は、壊した。
そうだ。壊したのだ。私が、私の手で。
私のしたことは、間違いだった。間違いだったのだ。
しばらく、家を離れていた。東京から帰って離れを覗くと、ミチさんが布団で伏せっていた。聞けば、食事もほとんど摂っていない、薬も飲んでいないという。
脈を取ろうとして、腕の細さに驚く。十日でこれほど衰弱してしまうのか。
そばにいられなかったことを詫びると、力なく私を見つめて、ミチさんは言った。
このまま死なせて、と。
馬鹿な。
私を置いていくなんて許さない。
叡心のもとへ旅立つなんて許さない。
死にかけているミチさんを抱く。涙を流して拒絶する女の膣内を蹂躙し、久方ぶりに精を吐き出す。
叡心の代わりに生きろ、と何度も囁きながら、何度も抱く。
ミチさんは気をやったが、顔色は良くなった。脈も正常だ。
明日から、また、毎日抱かなければ。