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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末
「荒木さんて見るからに草食系だもんね」
「美山さんは絶対肉食系でしょ」
「確かに、性欲強そう。ハゲってそうなんでしょ?」
派遣さんたちがコソコソと話しているのを聞きながら、私はアプリコットフィズを飲み干した。飲まなきゃ。飲まなきゃやっていられない――!
「でも、私は肉食系が好きだわ」
「あ、わかる。がっついて欲しいよね、自分だけに」
「そうそう。求められたいよね」
頷きながら、カシスオレンジを注文する。飲もう。そして、忘れよう。忌まわしい記憶を消してしまおう。
佐々木先輩が呆れながら私を見てくる。私がお酒に強くないことを知っている彼女は、心配そうに助言してくれる。
「度が低いからって、あまり飲み過ぎちゃダメよ」
「……わかっています」
耳をそばだてて荒木さんの言葉を拾う。ダメージは大きいけど、まだ諦めたわけではない。諦めたわけではないのだ。
「そもそも、セックスは子作りのために必要な行為であって、付き合っている間は必要ないと思うんです」
必要です。私はセックス――精液を出してもらわないと生きていけませんけど、男女のコミュニケーションの一部としてセックスは必要だと思います。
「コミュニケーションだよ、セックスは!」
美山さん、よく言ってくださった! その通りです! よく混ぜたカシスオレンジ美味しいです!
「セックスでコミュニケーションを取らなければならない関係性も、恋人としてはどうかと思いますよ。恋人同士ならもっと会話をするべきです」
会話も必要だけど、体の会話も必要なんですよ! 腹割って話すのと同じように、中に割って挿入って気持ち良くなるのも必要なんです!
「え、お前、女の意味不明なオチのない話に長時間付き合えるの? 途中で切り上げたくならない?」
「なりませんよ。ちゃんと聞いてあげますよ。女の人って共感してもらいたいんでしょう? なら、コミュニケーションに一番必要なのは会話だと思いますけどね」