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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
荒木さんのお土産は甘納豆。甘いもの好きな荒木さんらしいチョイスで、律儀にも全員分買ってきてくれていた。
他にも社員さんや派遣さんからたくさんお土産をもらってしまい、デスクの上や引き出しの中はお菓子だらけだ。長期休みのあとの風物詩だ。
佐々木先輩は「話はお昼にね」と言ったきり、黙々と社内通達に目を通し始めた。
私も何も言うことなく、与えられた仕事をこなし始める。夏休みボケで、少し回転数の鈍い頭を駆使しながら。
「夏休みに旅行に行こうって連れて行かれたのが、私の実家だったのよ」
お弁当を作る元気がなかった私は、コンビニで買ったパン。佐々木先輩はきっちりお弁当。
佐々木先輩は、サラリと大変なことを口にした。
「相手の方、佐々木先輩の実家、ご存知だったんですか?」
「連絡先交換したときに、たまたま私の実家の住所が登録されていたみたいで……私が知らない間に、向こうが親と連絡取っていたのよ」
「外堀、埋められましたね?」
「まさに! うちの両親なんか大喜びで……本当にトントン拍子に話が進んじゃって」
こんなはずではなかった、と先輩は肩を落とす。
「先輩は、結婚したくないんですか?」
「どちらでもいいのよ。子どもさえ育てられる環境があれば」
「じゃあ、いいじゃないですか。二馬力になるんですから、経済的には安泰ですよ」
「そうなんだけどね……子どもも懐いてるし、悪くはないと思うんだけどね」
何をそんなに迷っているのだろう?
私たちみたいに、おかしな関係ではないはずだ。佐々木先輩が少し歳上で、バツイチで、子どもがいる、それくらいしか問題になるような点はないと思う。