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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
「そのあと、彼のご実家にも挨拶に行ったんだけど……彼、その場で私の実家の養子になるって宣言しちゃったのよ」
「え?」
「しかも、彼のご両親からは賛成されたのよ」
「……ダメなんですか?」
「バツイチ子持ちの歳上女なのに、養子になりたいだなんておかしくない?」
どこがおかしいのか、よくわからない。
財産目当てを気にしているのだろうか? 佐々木先輩の実家って、何をしているんだろう? 自営業? 他に兄弟は? 養子になる、だなんて、それなりの状況と覚悟がないと言えないセリフだ。
先輩、情報が少なすぎます!
私のクエスチョンを察して、先輩は苦笑する。
「うちの実家は静岡で大手企業の孫請け会社をしているの。小さい会社で、一人娘の私が継がないなら、会社を畳んで他の会社に従業員を頼むか、誰かに譲るしかないんだけど。彼、自分の会社を辞めて、うちの会社を継ぐ気なのよ」
それは、佐々木先輩と結婚したいのか、それとも会社が欲しいのか、という疑問でしょうか?
それなら、先輩が戸惑うのも理解できる。
先輩は、会社を辞めてまで実家を継いでほしいなんて思っていないはずだ。元ご主人がそうではなかったように、今の彼氏にもそれは望んでいない。
だから、彼の真意が何なのか、理解できない。
「……それって、かなり、先輩のことを愛している証拠じゃないですか?」
「あっ、い!?」
先輩、お箸からご飯が落ちましたよ。
真っ赤になっている先輩を放っておいて、ティッシュで床に落ちたご飯をつかむ。
「先輩のご両親と連絡を取っていたなら、ご実家の情報は把握しているんじゃないですか? その上で、会社を継ぐにはどうすればいいのか考えたのでは? 先輩を実家にいさせたほうが、暴力男から守ることができるって考えたのかもしれませんよ。目の届く範囲にいて欲しいんじゃないですか?」
外堀から埋めるような人だ。たぶん、きちんと準備はしてあるのだと思う。佐々木先輩を逃さないように。
それは、先輩のことが心配だから。愛しているから。そうだと思う。思いたい。
「……本当に、そう思う?」
「思いたいです」
「孫請けの製造業なんて本当に儲からないのに、何を考えたのかしら」
「先輩とお子様のことじゃないですか? 第一に考えたのは。いいじゃないですか、船に乗っかっちゃえば」