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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

「先輩が静岡に戻っちゃうのは寂しいですけど、先輩の幸せのためなら我慢します。寂しいですけど」
「……私も寂しいわ。月野さんが淡白荒木さんとどうなるか、知りたかったのに」
「ハハハ。報告しますよ。玉砕だと思いますけど」

 乾いた笑いしか出ない。
 どこの世界に、「あなたのことが好きだけど、他にも恋人とセフレがいます」と告白してくる女を受け入れてくれる人がいるだろうか。普通はアウトだ。もちろん、翔吾くんは特殊な例なのだけど。

「陽子ちゃんの相手に比べると脈がありそうだと思っているんだけどね、私は」
「……日向さん、ですか?」
「あの子、仕事はできるのに、男の趣味は本当に悪いのよねぇ……あ、淡白荒木さんに惚れてる月野さんも同じか」

 佐々木先輩のしたり顔。くそー、私への報復だな、絶対。
 これはもう、是が非でも結婚してもらわねば! どこの誰だかわからないけど、私は彼氏さんの味方です!

「荒木さん、金沢に行ってたんだねぇ」

 お弁当を食べ終えた佐々木先輩が、甘納豆の製造元を見て呟いた。
 今年の夏休みは金沢にちょっと縁があるみたいだと思いながら、甘い豆を口に放り込んだ。荒木さんらしい、甘い甘いお土産だった。

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