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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
湯川先生になんて言おう?
好きです? 愛しています? 付き合ってください? 結婚してください?
でも、あなた以外の人ともセックスさせてください?
「それは無理だ」と言われたら、どうしよう。いや、その可能性のほうが大きい。無理なら……無理なら、セフレのままでいてください、は私に都合が良すぎる話。
たぶん、「付き合いきれない」とフラれてしまうだろう。その可能性が高い。
……湯川先生を失うのかぁ……好きなんだけどなぁ。
私がセフレさんたちに強いてきた感情が、私に跳ね返ってきている。
失うのが怖いから、本音を言わないような関係にしてしまったのは、私。
宮野さんは、その最たる例だった。彼は別れる直前まで、本音を隠してきた。「好きだからこそ失いたくない」という気持ちが、今ならよくわかる。
だから、セフレさんたちの本音を引き出すためにも、私が本音でぶつからなきゃ。逃げるのも隠れるのもやめにしないと、私はこれから先、後悔ばかりするようになってしまう。
「お待たせ。遅くなってごめん」
顔を上げると、荒木さんが笑っている。仕事が終わったようだ。
「ごめんね、飲んでいたのに。場所、移そうか」
「はい」
少し残っていたアイスカフェオレを飲み干して、片付ける。店の前で待ってくれていた荒木さんに合流して、ついていく。
「デザートが美味しいイタリアンがあるんだ。そこでいい?」
「はい、楽しみです」
職場の最寄り駅から三駅離れた駅の近くに、緑白赤の旗が掲げられた店があった。トラットリア、と書いてあったからそのまま店に入る。荒木さんが予約をしてあったのか、すんなりと席に通される。
オレンジ色の照明の、カジュアルな感じの店。スーツを着た男女だけでなく、家族連れもいる。メニューも、目玉が飛び出るほど高いわけじゃない。これでデザートが美味しいのなら、いいかもしれない。
二人でお腹の空き具合と相談をして、コース料理を頼む。とは言っても、本格的なものではない。二人でシェアしてね、という感じのコースだ。ワインは二人して苦手なようなので、それぞれソフトドリンクを頼む。