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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
「へぇ、セフレを彼氏に昇格させたの? ようやく? 遅かったねぇ」
「……もっと早くにすればよかった?」
「体の相性も性格の相性もいいなら、何を迷うことがあるのかなとは思っていたけど」
揚げ春巻きを食べながら、相馬さんは笑う。
何だろう、水森さんにも相馬さんにもそう言われるということは、セフレと付き合う・セフレと恋人同士になるということは、案外普通のことのような気がしてくるので困る。
でも、たぶん、違う。世間からはかなりズレている考え方だとはわかっている。
「バツイチ子持ちのデリヘル嬢と客が夫婦になるよりはよほど険しくはない道だと思うよ?」
「あぁ、確かに」
相馬さんの言う通りかもしれない。時代が違うせいか、娼婦と客が夫婦になるのはおかしくはなかったけれど、今は違うのだろう。
相馬さんも佐々木先輩のことではいろいろと苦労したのかもしれない。そういうところは全く見せない人だけど。
「でも、同僚がねぇ……好きな人から告白されたら、揺れるよね」
「……うん」
でも、だからと言って、翔吾くんと別れて荒木さんと付き合うような未来はどうしても描けない。
不思議と、荒木さんと手を繋いで一緒に歩く姿が想像できないのだ。
「初恋の人に似てるなら、やっぱりその人を美化してしまうもんね。でも、違う人だから、どこかで必ず綻びができるよ」
「私もそう思う。理想と現実は違うよね」
「違うねぇ。それをどこまで許容できるかだけど、理想が高ければ高いほど、現実はシビアだもん」
二人で頷きながら、真鯛のカルパッチョをつつく。
相馬さんとは話しやすい。水森さんよりもずっと話しやすい。きっと、佐々木先輩もそういうところに惹かれたんだと思う。そうであって欲しい。
「同僚にも話してみたら? 恋人以外にセフレがいるって」
「諦めさせるために?」
「逆。それでもいい、って言わせてしまえばいいよ」
いやいやいや。翔吾くんと別れて俺と付き合え、って言ってくる人だよ? どう考えても、一人で独占したいはずでしょ? セフレがいることを許してもらえるとは思えない。