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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

「一回ヤッちゃえばいいのに」
「セックス嫌いな人なんだって」
「嘘だろ。男でセックス嫌いな奴なんていないって。あ、今、俺すげーいいこと言った」

 あんまりいいセリフとは思えないよ、相馬さん。
 確かに、あの肉食獣の顔を見てしまったあとだと、荒木さんが「セックス嫌いなんです」と言っていたことがとても不自然に思えてしまうのも事実。
 どちらが本当の荒木さんなんだろう?
 手に入れるためにはがっつくけど、手に入れたらそれでいいというタイプなのかもしれない。釣った魚には餌をやらないタイプ……それは、嫌だなぁ。

「あかりは同僚のどこが好きなの?」
「……顔」
「あぁ、初恋の人とそっくりだもんね。それ以外では?」
「優しくて、仕事ができて……甘いものが好きで……」

 他には、他には……?
 私が荒木さんの姿を一生懸命思い浮かべていると、相馬さんがプッと吹き出す。見れば、肩を震わせて笑っている。

「あかりさぁ、考えなきゃいけないくらい好きなところが少ないなら、やめたほうがいいよ」
「でも、付き合っていくうちに好きなところは増えるかも!」
「体の相性が最悪だったら?」
「……」

 淡白かもしれない、という点においては、体の相性は最悪だ。いくら好きでも、セックスレスには耐えられない。死んでしまう。死活問題だ。

 荒木さんが定期的に私を抱いてくれなければ、隠れて誰かとセックスをしなければ生きていけない。そして、それがバレたときの面倒臭さを想像してげんなりする。
「あなたが私を抱いてくれたらこんなことにはならなかったの!」なんて、逆ギレもいいところだ。だったら、最初から付き合わなければいい話なのだから。

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