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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

 さて、荒木さんになんて言おう。
 私の悩みは目下、荒木さんの告白をどう処理するかということと、週末の精液確保をどうするかということだ。

 荒木さんは今週は外回りが多いらしく、木曜日の今日も朝の会議のあとすぐに出ていった。今日は直帰するそうだ。

 明日金曜日の予定も外回り。でも、明日までに、と言われた資料は既にできている。明日の朝必要なら、今日にはメールに添付して送っておきたいんだけど、なんて書いて送ろうか。普通に、いつも通りでいいかなぁ。何事もなかったかのように。差し障りなく。

「あれ、荒木くんは今日も外回り?」

 パソコンに向かって無難なメールを作成していると、総務部の日向さんの声が背後から聞こえてきた。誰に話しかけているんだろうと振り向くと、彼女は隣に立っていた。ビックリしたけど、私に話しかけているのではないみたいだ。

「ボード見たらわかるでしょ。今週はずっと外回り。あんたは荒木さんのスケジュールは把握していないんだから」

 佐々木先輩はそっけなく日向さんに応じている。この二人が話しているところはあまり見たことがないけれど、仲は良いらしい。
 佐々木先輩は「陽子ちゃんは仕事はできる」と評していたし、他の派遣社員さんの日向さんへの評価とは違うみたいだ。佐々木先輩が絶対ではないけれど、噂は鵜呑みにしすぎてはいけないということか。

「秋の交流会、誘おうと思って来たのに」
「あんたが本当に誘いたいのは荒木さんじゃないでしょ」

 どんなに声のトーンを落としても、隣の二人の声は私には丸聞こえだ。
 ……ん?

「だって、荒木くんが一緒じゃなきゃ来てくれないんだもん」
「誘えばいいじゃん。『荒木くんも来るって言っていましたよ』とか嘘ついて」
「乗ってくれるかな?」
「さあ。そこまでは責任持てないわよ、私」

 ……ええ、と。
 日向さんの好きな人、荒木さん、ですよね?
 ……本当に?

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