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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
波風立てない断り方、なんて難しい。波風立てない別れ方ですら少ない。相馬さんとの別れ方は稀有なのだから。
結局、悩みながら寝てしまったらしく、目が覚めたときには金曜日の朝だった。
「彼氏と別れて俺と付き合え、っていう告白をどうすればいいか? 月野さんの友達はモテるのねぇ」
佐々木先輩は肉じゃがのじゃがいもを頬張りながら思案する。あの、その肉じゃが、色からしてめちゃくちゃ美味しそうです。一口欲しいです。一口……! あ、食べ……ちゃったぁ。
私は自分のきんぴらゴボウで我慢する。
佐々木先輩が辞めてしまったら、こんな楽しくて美味しい時間もなくなってしまうんだなぁと思うと寂しい。やっぱり寂しい。
「そりゃ、彼氏と天秤にかけるしかないわけだけど、何が決め手になるかしら。結婚するならまだしも、付き合うだけなら、好きだと思ったほうと付き合えばいいんじゃない?」
「あの、両方好きだったら?」
「月野さんの友達は泥沼が好きなの? 上手に二股できるなら、二人と付き合ってもいいんじゃないかしら。難しいでしょうけど」
私もそう思います。
しかも、湯川先生まで参戦したら、三股です。ハードです。関係が複雑です。難しすぎます。
「でも、強引な男は私は好きじゃないわ。信頼関係が成り立っていれば別だけど。慣れ親しんだ彼氏と、未知の部分が多すぎる人なら、私は彼氏を選ぶわねぇ」
信頼関係があったから、相馬さんの強引さにもついていけたんですね、よくわかります。
結婚には勢いが必要ですもんね。それを相馬さんが生み出してくれたんですよね。
「何よ、ニヤニヤしちゃって。変な月野さん」
「い、いえ、そんなにニヤニヤしてましたかね? すみません」
危ない、危ない。
相馬さんと佐々木先輩のことを考えると、自然とニヤニヤしてしまう。とても危険だ。でも、本当に幸せになってもらいたい。
「まぁ、彼氏に不満がないなら、未知の男はやめておいたほうがいいと思うわよ」
「友達、彼氏に対しての不満は言ったことがない気がします」
「じゃあ、告白は回避したほうがいいわね」
「どう断ればいいですか? 職場の人みたいなんですけど」
どう断れば、角が立ちませんか?
本当に、そこが知りたい。