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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
「あ、あの」
「尊敬しているっていうのは本当なんだろうけど、たぶん、月野さんは俺のこと好きでしょう?」
「……嫌いでは、ないです、もちろん」
「花火大会のとき、異性として意識してくれたよね?」
「……荒木さん、その」
「あのときの月野さんの表情、かわいくて忘れられないんだけどな」
どうしよう。
断っても諦めない、諦めてくれないなんて、予想外だ。想定の範囲外だ。
どうすれば、いい? どうすれば諦めてくれる? 私の頭の中は真っ白。パニックだ。
「……ごめんなさい」
「んー、俺が月野さんから聞きたいのはその言葉じゃない。じゃあ、一つ質問するね」
だって、もう、謝るしかない。どうしたって諦めてくれないなら、何度も謝るしかない。
ごめんなさい、付き合えません。荒木さんとは付き合えません。本当にごめんなさい。
「健吾とイトイの妹尾さんは良くて、俺がダメな理由は何?」
さっきまで真っ白だった頭の中が、真っ黒に塗り潰されていく感覚。目の前に闇が広がっていくこの感覚を、私はよく知っている。
私の目の前にいるのは、誰?
あなた、本当に、荒木さん?
「俺、月野さんの匂いならすぐわかるんだよ。甘くて美味しそうな匂い。俺と一緒にいると強くなるよね。今もそう。気づいていないと思うけど」
ねぇ、あなた、誰?
「キスをした妹尾さんからは少しだったけど、健吾からはすごく匂ってきたから、一緒にいたんだなとすぐわかったよ。ビックリしたけど」
荒木さんは笑う。私の知らない顔で。
「翔吾は知っているの? 健吾とも肉体関係があるってこと。それとも、三人で楽しんだ?」
悪魔のような笑顔だと、思った。