この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末
まるで雲の上にいるかのような浮遊感。いい匂いがして、暖かくて気持ちがいい。
二日酔いはしんどいけど、お酒を飲んだあとにこんな幸せな気分になれるのなら悪くない。
「……んう」
街灯に照らされた地面が揺れている。ぼんやりとした頭でキョロキョロとあたりを見ると、私の住んでいるアパートの近くだとわかる。
「目、覚めた?」
下から声が聞こえてきた。下から。荒木さんの声。
頭からサァッと血の気が引いていく。
……一瞬で、覚醒、しました。
「っえ!? あ、あ、あら、き、さ!?」
「月野さん、飲み過ぎ。佐々木さんから住所聞いて、今送ってるとこだよ」
「えええ!? すみません、すみません、すぐ降りますから!」
私は荒木さんにおんぶされていた。道理で幸せな気分になっていたはずだ。好きな人の背中で眠りこけていたなんて、申し訳ないんだけど、幸せすぎる。
しかし、ジタバタしても彼が降ろしてくれる気配はない。
「あと少しでしょ? 送っていくよ」
「でも、そんな、悪いです」
「大丈夫。さっきまでタクシーだったし、こう見えてジムにも通っているんだから」
ふふんと得意そうな声。その得意そうな顔も見たいけど、贅沢は言わない。こんなに近くで声が聞けるだけで、触れ合えるだけで、幸せ。
あああ、もう! 佐々木先輩、グッジョブです!!
「月野さんち、俺と同じ方向だったし、送り狼にはならないだろうと判断されて、俺が送ることになったんだよ」
送り狼……あぁ、でしょうね、性欲の薄い荒木さんには似合わない言葉ですもんね。間違いない人選だと思います。女としては悔しいですが。