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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

「香水じゃないよね、これ。すごくいい匂い。俺は好きなんだよね、月野さんの匂い」

 斜め上から頭の匂いをスンと嗅がれて、恥ずかしさと驚きのあまり硬直してしまう。荒木さんの行動と言動が、いちいち心臓に悪い。めちゃくちゃドキドキしてしまう。

「……今、興奮したでしょ? 月野さんはわかりやすいね。ほんと、かわいい」
「……」
「あ、怯えないで。俺が興奮しちゃう」

 暗闇の中に浮かび上がる荒木さんの笑顔は、妖艶だ。
 あの、荒木さん、色気、ダダ漏れです。ちょっと抑えてください……!

「そ、んな、こと言われましても」
「怯えている子は、もっといじめたくなるんだけど、俺」
「……あの、つかぬことをお伺いしますが、それはソフトなほうですか? それとも、ハードな?」

 荒木さんの目が細くなる。
 あ、それ、地雷でした? 何かのスイッチでした? 私、余計なこと言いました?

「察しが早くて嬉しいな。俺はどちらも好きだけど、月野さんはどっちが好き?」
「いや、あの、私、別にそういうプレイが好きというわけでは」
「へぇ。3Pはできるのに?」
「さんっ……!?」

 ……いや、ほんと、怖いです、荒木さん!
 見透かされるのが怖すぎて、荒木さんの顔を見ることができない。
 でも、何を言っても何をしても、きっと匂いでバレてしまうのだろう。

 困った。金曜日は、翔吾くんから奪った香水をつけなくちゃいけない。多少は誤魔化せるだろうか。
 アパートまであと少し。私の精神力がもつかどうかの瀬戸際だ。


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