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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

「あかりさん」

 耳元で聞こえた艶のある声に、体が強張る。緊張が走る。
 顔を上げることができない。絶対真っ赤だ。なのに、体は「顔を上げろ」と命令する。頭ではダメだとわかっているのに、体は本能に忠実すぎる。

 ……キス、したい。

 それだけは、それ以上は、絶対、ダメなのに。

「ねぇ、あかりさん。翔吾と別れて」
「ダ、ダメです」
「強情だね。妬けるなぁ。んー、じゃあ、俺とも付き合う?」

 驚きすぎて、思わず顔を上げてしまった。
 ……今、なんて?
 俺とも、付き合う? 付き合う?
 それは、セフレになりたいって、こと?

「あ、いいね、その顔」

 荒木さんが笑っている。私の目の前で、笑っている。少し背伸びすればキスできてしまう距離で。

「今、俺のこと、求めたでしょ? ねぇ、あかりさん」

 求めていない、なんて言えない。嘘をつけばつくほど、彼から逃れられない気がする。

 体が求めるのだ。
 お腹が空いた、キスをしろ、精液が欲しい、セフレを増やせ――荒木さんを手に入れろ。

「荒木、さん」

 私の唇にそっと触れる荒木さんの指先は熱い。あの日、繋いだ手よりも熱い。

「もっとその顔を見せてよ、俺に――」

 ぐらり、心が揺れる。

「――俺だけに」

 近づいてくる唇に、私は思わずぎゅっと目を閉じた。

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