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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

「へえ、あかりちゃん、ああいう男が好みだったの?」

 シャワーを浴びてソファに寝転ぶケントくんに、洗濯物を干しながら最近のことを報告する。とりあえずは、さっきの荒木さんのこと、だ。

「豹変する前の荒木さんが好きだったんだけどね」
「ま、仕方ないよ。甘いものが好きで、匂いに敏感な人なら、あかりちゃんの匂いは特別美味しそうに思えるだろうし」
「……そんなに匂う? どんな匂い?」
「飴とか金平糖とかの甘ったるい匂い」

 思いの外、甘い匂いなんだなと想像する。……甘いもの苦手な湯川先生、そんな匂いによく耐えていたなぁ。ほんと申し訳ない。

「食事をしたくなると匂いが出てくるのは普通のことだよ。フェロモン? とにかく、異性を誘うための匂いだね」
「サキュバスもインキュバスも、結構動物的なんだね」

 発情期みたいなものかと納得させる。私たちは年がら年中、発情期みたいなものか。まぁ、間違いではない。毎日セックスだと疲れるけど、たぶん毎日でも精液は受け入れられる。

「しかも、あかりちゃんはあいつが好きなんでしょ? じゃあ、あいつの近くにいると匂いは強くなるだろうね」
「なるほど」
「あいつもあかりちゃんのこと好きなんだよね……嫌だな」

 ペットボトルの飲み口をガジガジと噛みながら、ケントくんは唸る。綺麗な顔なのに、眉間にシワを寄せちゃって。

 それにしても、ケントくんが泊まる気満々だったのが解せない。荒木さんとの夕食中に『今から泊まりに行くね』というメッセージが入っていたのも、解せない。私の都合なんてお構いなしなのが、解せない。

 本当に、もう。
 それを受け入れている私が一番、解せない。何で許しちゃうかなぁ……もう。

「あいつもセフレに加えるの?」
「んー……それは、どうかな。荒木さんは職場の人だから、あまり波風立てたくなくて。それに、今の彼氏のはとこだし」
「は? カレシ? 聞いてない。どういうこと?」
「あ……セフレを彼氏にしたの、まずかった?」

 洗濯物を干し終えて、窓とカーテンを閉める。振り向いた瞬間に、ケントくんに抱きしめられる。

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