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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

 浴室から出て、冷房の効いた台所で朝食を作る。とは言っても、ケントくんがどれだけ食べるかわからないので、少なめに作る。足りなかったら、自分でどこかで食べてくるでしょ。

 トーストにバターを塗って、ベーコンエッグにサラダ、スープを準備してベッドのほうを見ると、既に起きていたケントくんがこちらを見ながらニヤニヤしていた。

「起きてた?」
「うん。おはよう。作ってくれたの?」
「一応ね。食べたら帰ってね」
「え、やだ。帰りたくない」

 ベランダに干してあった乾いたトランクスをケントくんに放って、プレートをミニテーブルに置く。
 トランクスを穿いたケントくんが早速トーストにかじりついているのを見て笑ったあとで、スマートフォンの通知ランプの点滅に気づく。
 誰からだろう?

「水森って人から着信があったよ」
「水森さん?」
「もちろん画面を見ただけで、通話はしてないけど。そいつもセフレ?」
「いや、違うけど、お世話になってる人」

 サラダを食べながら確認してみると、確かに二件着信があったようだ。そして、そのあとでメッセージアプリにメッセージが届いたみたいだ。

「スープ美味しい」
「インスタントだよ。作ったのはベーコンエッグくら……い?」

 メッセージの文面を見て、固まる。ケントくんはさっさと朝食を平らげ、私のベーコンエッグを狙っている。どうやら足りなかったみたいだ。

「ごめん、ケントくん。やっぱ帰って」
「えー、やだ。今日はここにいたい」
「無理。予定ができたの。今夜はたぶん帰らないから」

 ブーイングをするケントくんにベーコンエッグを差し出すと、喜んで食べ始める。現金というか、扱いやすいなぁ。そのほうがありがたいけど。

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