この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
コップとゼリーをサイドに置いて、ぎゅうと先生の頭に抱きつく。先生が慌てて「シャワー浴びていないから、臭いから!」と逃げようとするのを、離さない。
……あぁ、先生だ……湯川先生だ。甘い匂いのしない、汗臭いだけの、先生だ。
じんわりと胸の奥が暖かくなっていく。
実際に先生に触れると、決心が揺らいでしまう。でも、ならば最後に思い残すことのないようにしておきたい――そんな気持ちだ。
「迷惑だった?」
「め、迷惑だなんて! そんなこと!」
「会いたかった」
好きだと自覚したら、どうしてこんなふうに素直になれるのか。フラれることを覚悟したら、どうしてこんなふうに大胆になれるのか。
不思議だ。
湯川先生の体は熱い。そして、硬直している。カチコチだ。
「……あかり?」
「先生に会いたかった」
「俺も、会いたかった。連絡できなくて、ごめん」
「ん、いいよ、会いに来たから」
「ありがとう、あかり」
腰に回された腕はやはり熱い。夏風邪をかなりこじらせているみたいだ。これが医者の不養生ってやつか。
ボサボサの髪を撫で、頬にキスを落とす。剃っていないヒゲがまばらに生えている。チクチクするのも新鮮だ。
何度もキスをすると、湯川先生はビクリと体を震わせて逃げようとする。
「ダメ、あかり、風邪が移るから」
「キスしたい」
「ダメ。移したくない」
「せんせ」
逃げようとする先生の太腿の上に座り、腕を首の後ろで組んで、ほぼ同じ視線の高さで、笑う。