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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白

 ザアア、という水の音に気づいて目を開けると、目の前で眠っているはずの湯川先生がいなかった。ベッドには、寝室には、私しかいなかった。

「せんせ!?」

 慌ててベッドから降りてリビングへ向かうと、あたりはすっかり薄暗くなっている。時計を確認して愕然とする。十七時……かなり寝てしまっていたらしい。寝過ごしてしまった。
 しかも、窓の外は一面灰色の世界。雨だ。しまった。傘を持ってきていないのに。

 ガチャン、とどこかで音がした。奥から音が聞こえるドアを開けてみると、脱衣所。バスタオルで体を拭いている先生と目が合い、「うわっ」と声を上げられる。
 あの、裸は見慣れているので、バスタオルで隠さなくてもいいです。女子高生か。

「あかりのえっち!」
「だって、先生がいないから!」
「あ、ごめん、探した? 寂しかった? あかりはかわいいなぁ」

 明るく笑う湯川先生。しんどそうな気配はそこまで感じられない。

「大丈夫なの?」
「うん、熱も下がった。よく寝たからかな、調子はいいよ。あ、お腹空いたから、ご飯食べたいな」
「……準備する」
「うん、ありがとう」

 シャワーを浴びることができるくらいまで回復したなら、良かった。食欲があるなら、良かった。
 お粥とスープを温めながら、ホッとする。本当に、良かった。

 ただ、寝過ごしてしまったせいで、私が帰るタイミングをかなり外してしまった。困ったなぁ。別れ話、あんまりしたくないんだけどなぁ。

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