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サキュバスちゃんの純情《長編》
第10章 黒白な告白
「望を、愛してる」
湯川先生は長々と息を吐き出して、ゆっくりと深呼吸をした。
「……戻れないよ?」
「いいよ」
「夢じゃない、よな?」
「うん。夢じゃない」
「あかりをぜんぶ、もらっていいってこと?」
「……あ、半分、じゃダメ?」
「あー……なるほどね」
参ったな、と湯川先生は小さく呟いて、苦笑した。
二月のあの日、先生は、同じようにそう言って笑ったような気がした。忘れかけていた記憶だ。
「残酷な選択肢だな、これは」
「ご、ごめんなさい」
「その半分の中に、心は含まれる?」
「うん。心と体を半分こ」
翔吾くんもだったけど、湯川先生も理解が早い。全部を説明しなくても理解してくれる。ただ、納得できるかどうかは、別みたいだけど。
「なるほど、あかりの心と体を、もう一人と共有するわけね……こんなに独り占めしたくて仕方ないのに。本当にこんな残酷な選択肢、聞いたことないよ」
ごめんなさい、と再度謝ろうとした瞬間に、唇が塞がれる。優しく労るようなキス。ゆっくりと緊張を解していくキスだ。
「覚悟を決めろってことでしょ。わかってる」
湯川先生は、深い深い溜め息をついたあとに私の頬にそっとキスをして。
「あかり、結婚しよう」
耳元で、甘く痺れるような言葉を囁いた。