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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

「え、何、そのオムレツ」
「あっちで目の前で焼いてくれたよ。トマトソースも美味しい」
「俺も欲しい。もらってこよ」

 ビュッフェ形式の朝食にて、プレートの中身が似たようなものになっている二人を見て、笑ってしまう。
 翔吾くんはご飯にお味噌汁、湯川先生はパンとスープだけど、おかずはほぼ同じものを取ってきたようだ。似た者同士だと言ったら、二人は怒るだろうか。

「あかりは甘いものばかりか……」
「ワッフル美味しいよ?」

 生クリームたっぷり、ベリーソースはちょっとだけ。焼きたてワッフルに、コーンスープ、スフレチーズケーキにシフォンケーキ……朝から贅沢だ。
 甘いものが苦手な湯川先生は、ちょっと引いている。
 昨夜はたくさん精液を摂取したから、お腹はそこまで空いていないのだけれど、甘いものが目の前にあるなら食べずにはいられない。

 今朝は二人より先に起きて、シャワーをさっと浴びて支度を整えた。湯川先生と裸で抱き合っているところを翔吾くんに見せていいものか判断できなかったし、湯川先生に朝から貪られるのも遠慮したかったのだ。
 結果的には、良かったと思う。二人とも普通に起きて、普通に三人で朝食を摂っているから。思った以上の波風は立っていないように思う。……思う。

「望さんはホテルによく泊まるの?」
「学会があるときはたいていホテルに泊まるかな。あかりと会うときもホテルが多いし」
「へぇ。センスいいホテル、それでよく知ってるんだ。オムレツ美味い」

 波風は立っていないし、火花も散っていない、よね?
 お互いの一言一言にドキドキハラハラしてしまう。たぶん、それは私だけだ。二人は気にしていないように見える。

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