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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

 佐々木先輩の寿退職が朝会で伝えられると、独身の女性派遣社員さんたちは色めき立った。
 彼女たちは私に相手の素性を聞いてきたけれど、「詳しくは知らないので」と笑顔でかわした月曜日の午前中。

 午後には「誰が派遣されてくるのか」の話題で持ちきりになっていたので、去る人よりも新しい人に興味が移ったみたいだった。
 もちろん、佐々木先輩は黙々と自分の仕事をこなしていたのだけど、首元から晴れて左手薬指に移ったリングがキラキラ輝いているのも、佐々木先輩に笑顔が増えたのも、気のせいではないのだ。

 昨日、私もリングを買いに行った――買いに連れて行かれたのだけれど、婚約指輪も結婚指輪も買ってあげたいと言う湯川先生と若干口論になってしまった。
 どちらも買ってあげたいと譲らない湯川先生、結婚指輪だけでいい――そもそも指輪はいらない私。
 既製品にするかオーダーメイドにするか、という点でも意見が対立し、結局、婚約指輪はオーダーメイド、結婚指輪はシンプルな既製品、に落ち着いた。

 この調子だと、結婚式にもいろいろと意見の対立が出てきそうだと不安が込み上げてくる。式以降の、生活にも。

 なるほど、これがマリッジブルーってやつなんだな、と納得しながら、資料室の中から荒木さんに指定された凡例の資料を探す。
 何しろ、データ化される前の資料が欲しいのに、美山さんも課長も、時期も社名も覚えていないそうで。「面倒なこと頼んでごめん」と荒木さんに申し訳なさそうに頭を下げられたら、断ることはできない。

 本当に面倒なのだけど、ファイリングされた膨大な資料の山と一人で戦っている最中なのだ。一人で。
 一人のほうが気が楽だ。狭い資料室で、荒木さんと一緒に資料を探すなんてできるわけがない。甘い匂いに当てられた荒木さんがまた豹変しないとも限らない。今日は彼が外回りで良かったと思う。

 冷房は効いているけれど、ジャケットは脱いだ。人があまり出入りしない資料室は、結構埃っぽいからだ。
 ブラウスは腕まくりし、髪はゴムで適当に束ねて、パイプ椅子にあぐらをかいて資料を漁る女の姿など、見せられるものではない。

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