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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

 あかりさんがいい。
 あなたが欲しい。

 なんで、そんなに求められるのか。
 だって、私じゃなくても女の人なんて山ほどいるのに。
 なんで、その中から私を選ぶのか。
 なんで、選ばれるのか。選ばれてしまうのか。
 答えは簡単。

 私がサキュバスだから。

「荒木さん、私は」
「好きなんだ」

 わかっている。
 両腕の籠に私を閉じ込めながら、抱きしめないのは、荒木さんもギリギリのところにいるのだということ。職場で手を出さないのは、まだ理性があるということ。

 せめぎ合っているのは、わかる。わかっている。
 その危うい均衡を、崩してしまってはダメだ。

「どうしようもなく、あかりさんに惹かれてしまうんだ。翔吾の彼女だとわかっていても、健吾とも関係があるってわかっていても、望んでしまう」
「……ごめんなさい」

 惑わせてしまってごめんなさい。
 気持ちに応えることができなくてごめんなさい。

「あかりさん、こっち見て。俺を見て」

 触れてはこないのに、荒木さんを近くに感じる。触れるよりもずっと近くに。

「あかりさん、お願い」

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