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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

 腕まくりをしていた袖を直し、ブラウスのボタンを留める。荒木さんは椅子に座り、天井を仰ぎ見る。

「資料、ありがとう。月野さんは帰っていいよ」
「荒木さんは?」
「月野さんが帰ったら帰るよ。このままだと、オフィスで押し倒してしまいそうで、怖い」

 たぶん、それは本音。甘い毒の匂いに当てられながらも自制心が勝るのだから、荒木さんは強い人なんだと思う。

「……すみません。お先に失礼します」

 置いてあったジャケットを取り、荒木さんの座る椅子の間を擦り抜ける。終電には間に合いそうだと思いながらドアノブに手をかけ、うなだれたままの荒木さんに一礼して資料室を出る。

 これは、何回目なのだろうか。二回目? 三回目?
 荒木さんの中で三回目なら、四回目はないはずだ。これで諦めてくれるはずだ。
 諦めて……。

 薄暗い廊下を営業部に向かいながら、立ち止まる。
 荒木さんが諦めてくれるなら、私にとっても、恋人たちにとっても、幸せなはずなのに。

 なんで、こんなに、悲しいのか。
 なんで、こんなに、涙が溢れるのか。
 荒木さんの顔が、叡心先生に似ているというだけなのに。

 叡心先生。
 苦しいです。悲しいです。
 私はまた、あなたを失ったような気分です。

 先生に似た人を見つけるのに、また百年待たないといけないなんて、本当に――苦しいです。

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