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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

「湯川からあなたを取り上げたら、どうなると思いますか? 水森貴一と同じことになりますよ」
「……先生は、強いですよ」
「男はみんな弱い生き物ですよ。どんな女性より、あなたが一番よく知っているでしょう?」
そう、ですね……そう、でした。
男の人は弱い。私はよく知っている。
叡心先生も、水森貴一も、宮野さんも、弱かった。男の人の心の弱さを、私は、よく、知っている。
「湯川の前からいきなり消えないであげてください。せめて、正体を明かしたあとで、納得してもらってからにしてください」
そうです、ね。そのほうがいいかもしれません。湯川先生と翔吾くんのことをきちんと考えたら――今までのやり方と同じことは絶対にできない。
きちんと「さようなら」を言わなければならないのだ。
「僕は、湯川の絶望した姿を見たくありませんので」
「……はい」
「お願いしますね」
わかりました、と頷いて、私は小さなグラスの中身をグイと飲む。ヒヤリ冷たい、さっぱりとした喉越しの。
「……それ、僕の冷酒……」
あぁ、冷酒って結構度が高いんだな、と、ぐるぐる回る頭の中で考えて。
じゃあ、二人にはいつ話そうかな、と、考えたけれど。
結局、考えるのはやめてしまった。

