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サキュバスちゃんの純情《長編》
第11章 幸福な降伏

 寝返りを打って、涼しい空気に気づいて目を覚ます。目の前には真っ白なシーツ。暗闇にぼんやり光るオレンジ色のライト。
 ホテルのようだと気づき、いつホテルに来たのか思い出そうとして――真っ青になる。

 ――覚えていない。
 どら猫亭で水森さんと飲んでいたところまでは覚えているけれど、それ以降の記憶がない。
 慌てて自分の格好を確認して、ホッとする。ブラウスにスカート。脱いではいないみたいだ。スカートがシワになるくらいなら、いいや。大したことではない。

 部屋はホテル……ビジネスホテルのツインのよう。壁際のベッドで誰かが寝ている。
 ……誰だ?
 水森さんと解散し、酔っ払った私が誰かをナンパして連れ込んだという可能性はある。その可能性は非常に高い。油断するとよくあることだ。
 気になって、こっそりベッドに近づいて相手の寝顔を確認して――悲鳴が零れた。

「みっ、み、みず!」

 水が欲しいのではなくて。
 ナンパして連れ込んだ男の人ではなくて。

「……あ、あぁ……起きましたか」

 ふわぁと大きな口を開けて起き上がったのは、水森さん、だった。

「酔い潰れたあなたをここまで連れてくるのは難儀しましたよ」
「すみません! 本当にすみません!」
「おんぶした際に、不特定多数の方にパンツを見せてしまったかもしれませんが」
「大丈夫です! 慣れていますので!」

 そんな恥ずかしいことに慣れていると言ってしまうのも女としてどうかと思うけれど、素っ裸に近い状態で文字通りヤリ捨てられていたこともあるのだから、それに比べればパンツが晒されたことくらい、何ともない。自尊心が少し傷ついたくらいだ。少しだけ。

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