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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か
「あかり」
するり、暖かい指が這う。私の左手が湯川先生に引き寄せられる。
「俺が死ぬまで、そばにいて」
薬指に冷たい感触と微かな重み。
湯川先生が選んでオーダーした銀色に輝くそれは、私を縛るものか。それとも、私に幸福をもたらすものか。
「……湯川先生が先に死ぬのが前提?」
「あかりは生きるでしょ? 俺を看取ってよ」
「確かに、長生きする予定だけど」
プラチナのリングに、ちょっと大きめのルビーに、サファイアとダイヤのアソート。カラットは小さいけれど、存在感のある婚約指輪。石もデザインも湯川先生が選んだものだ。
結婚指輪は小さな三つの石が入ったシンプルなものにしたはずだ。確か。
「ん、ぴったり」
「……指輪なんて、初めて」
「そうなの? 叡心の絵にも指輪は描かれていなかったね、そういえば」
「うん。綺麗……」
左手を頭上にかざしてその輝きを確認する。灰色の空にキラキラ光る指、悪くない。
「あかり」
振り向いて、湯川先生のキスを受け入れる。優しい口づけ。触れるだけのキス。
唇が離れる瞬間に、湯川先生の優しげな瞳が目に映る。そして、強く、抱きしめられる。
「そばにいて、あかり。ずっと」
「……望」
「離れないで。離さないから」