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サキュバスちゃんの純情《長編》
第12章 性欲か生欲か
ざわめく空気の中に、静かに言葉が落ちる。
決めていた。
もし、私のすべてを知った上で私とともに生きたいと願ってくれる人が現れたら、そのときは――迷わず、その手を取ろう、と。
「……何があっても、離さないでね?」
「もちろん」
「約束して、望」
湯川先生の瞳に、私が映る。私だけが。
死にたくなるくらい何かに絶望しても、私は彼の手を離さない。そう誓うよ。
「約束するよ。あかりをずっと愛してる」
強く強く抱き合って、キスをして、誓う。
今度は、この手を離さない。
最期まで、離したりはしない。
「望、私も……愛してるよ」
抱き合って重ね合う唇に、私はようやく納得できる答えにたどり着けた気がしている。
私はサキュバスで、生きるために精液が必要で、不特定多数の男の人と交わることに抵抗はないのだけれど――やっぱり、好きな人を愛したいし、好きな人から愛されたかったのだ。
唇を甘く食み、舌に吸い付いて、お互いの熱を確認しながら、思う。
やっぱり、心を通じ合わせたかったのだ、と。
「……あぁ、ほんと、翔吾には譲りたくないなぁ」
「それはこっちのセリフ」
突然の声にめちゃくちゃビックリして湯川先生と同時に振り向くと、腕を組んだまま窓辺に仁王立ちしている翔吾くんが目に入る。ボクサーパンツだけ着用している彼は、ムッとした表情でこちらを睨んでいる。
……ええと、ご立腹のよう、ですね。