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サキュバスちゃんの純情《長編》
第14章 小咄(一)

尾道駅→

「うわぁ、すげぇ」
「潮の匂い……ほんと、目の前が海なんだな」
「じゃあ、右も左も海岸じゃん! どっちにいけばいいんだ? どっちにあかりがいるわけ?」
「あかりのホテルの近くじゃないか?」
「ああ! 地図、地図!」
「……あ、へぇ、尾道ラーメン」
「ラーメン? 確かにお腹空いたけどさぁ、望さん、何見つけてんの!」
「食べてく? 奢るよ」
「食べる」

 観光客っぽいことをする二人。傍目には仲のいい兄弟に見えているのかも。

「あ、また猫」
「猫多いなぁ」
「猫で観光客呼んでるみたいだよ」
「へぇ。あかりも猫みたいだよなぁ。気まぐれだし、構おうとすると逃げていくし」
「犬よりは猫だね、確かに」
「……会いたいなぁ」
「……そうだね。会いたい。ってか、抱きたい」
「俺も。抱きしめたいなぁ」
「いや、俺は抱きたいんだけど」
「翔吾さぁ……お前の頭の中、どうなってんの? セックスのことしか考えてないの?」
「そうじゃないけどさぁ……三週間してないし」
「……抜けよ。あかりの動画があるんだろ」
「あー……あれはね、うん、なんていうか」
「あ、タクシー。乗るか」
「乗る」

 隠し撮り動画についてそれ以上突っ込まれなくてホッとした翔吾。突っ込むことしか考えていないみたいだけど。

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