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サキュバスちゃんの純情《長編》
第15章 小咄(二)

【どら猫亭】

「水森先生、最近彼女さん連れてこないですね?」
「……彼女ではありませんよ」
「ツッキーはいい子だぞー? ウチの奥さんのほうが別嬪だけどな!」
「ですから、別にそういう関係では」
「いい感じだと思うんですけどね、二人」
「うんうん」
「でも、月野さんは友人の彼女なので」
「ええええっ! やだ、三角関係!?」
「ツッキー、モテモテだなぁ!」
「三角どころか……まぁ、モテモテですね」
「水森先生、奪っちゃえばいいのに」
「……」
「俺もフジちゃんをゲットするの大変だったからなぁ」
「だからー、何回も謝ってるじゃないの!」
「未だにフジちゃんが包丁持っていると恐怖で震えてしまうんだよなぁ」
「嘘よ、嘘! そんなことないでしょ!」
「……あの」
「あのときのフジちゃんは怖かった! マジ怖かった!」
「謝ってるでしょー!」
「俺、死ぬかと思ったもん」
「死ななかったから良かったじゃない!」
「……だし巻き……」
「あのとき着ていたシャツ、気に入っていたんだけどなぁ」
「新しいシャツ、買ってあげたじゃない!」
「腹の傷は、名誉の負傷、男の勲章だな!」
「まぁ、あなたがそう言うなら」
「……だし巻きが欲しいのですが」
「水森先生も早くいい嫁さんもらえよー」
「そうそう、早く紹介してくださいね!」
「……だし巻き」

 水森康太が無事にだし巻き卵を食べられたかどうかは、不明。
(永田夫妻の馴れ初めは「スパイス」にて。露骨な宣伝ですみません。笑)

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