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サキュバスちゃんの純情《長編》
第15章 小咄(二)

【どら猫亭】

「私、水森さんのこと嫌いれす」
「それはどうも」
「怒ららいんれすか?」
「酔っ払いに怒っても仕方ないでしょう。酒に弱いのにこんなに飲んで。湯川に会えないからって」
「その顔! すっごくムカつきまふ! やめてくらはい!」
「この顔、生まれつきなんですが」
「生まれたときからムカつく顔なんれすよ!」
「そうですか、それはすみません」
「あー! もう! ムカつくー!」
「具体的には?」
「水森貴一の子孫らってらけれムカつく!」
「親も祖先も選べませんからね」
「得意気なのがムカつく!」
「別に得意気ではありませんが」
「鍛えてるのもムカつく!」
「……なぜ?」
「美味しく見えるからムカつくんれす!」
「……あぁ、なるほど。食べられませんからね」
「れも、絶対セックスしないれすから!」
「そうですね」
「しないんれすよ!」
「はいはい。湯川に悪いですからね」
「うぅ、湯川せんせーに会いたい……」
「今日は京都です」
「会いたいよぅ……」
「……寝ないでくださいよ、ちょっと」
「……せんせー……」
「ちょっ、どうするんですか、この酔っ払い! 終電に突っ込みますよ!?」

 あかりは案外絡み酒。そして、よく寝落ちする。
 康太は結構な世話焼き。そして、自制心は強い。

「あの二人、どうなってるのかしら」
「お似合いなんだけどなぁ」

 永田夫妻は興味津々。

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