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サキュバスちゃんの純情《長編》
第15章 小咄(二)

【女子会】

「ねえねえ、あかりさん、こちらの紺鼠はどうかしら?」
「んー……千恵子さんには灰色なら小町鼠とか灰桜の薄めの色……あ、でも、若草色とか若い色も似合うと思います」
「そう? 若すぎないかしら? 無地がいいと思っていたけど、江戸小紋もいいわねぇ」
「あ、東雲色の江戸小紋、ありますよ」
「あら、素敵。だけど、若すぎないかしら?」
「千恵子さんなら若すぎることはありませんよ。あ、じゃあ、私と出かけるときに着てきてくださいよ」
「それはいいわねぇ。今日はありがとう。私の友達は誰も映画に誘えなくて。また誘ってもいいかしら?」
「もちろん。千恵子さんの年代の方だと真知子巻きのほうが有名ですもんね」
「そうなのよ! わかってくださる?」
「岸さん、綺麗でしたもんねぇ」
「本当に」
「昔の女優さんだと、原節子さんとか、司葉子さんとかもお綺麗で」
「あかりさん、よくご存知ねぇ」
「あ、ええと、昔の映画が好きなんです。黒澤明監督や小津安二郎監督の」
「……あかりさんが康太の恋人ならどんなに良かったことか」
「す、すみません」
「湯川くんと別れたら、是非康太と!」
「千恵子さん、それは無理ですー!」

 水森千恵子はあかりのメル友。
 甘いものや世間で話題になっているものが好きな千恵子に付き合って、よく出かける仲になる。
 ちなみに、あかりのほうが歳上。

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