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サキュバスちゃんの純情《長編》
第2章 週末の終末

「つーきーのーさーんー!?」
月曜日、会社に行ったら佐々木先輩から鬼のような形相で詰め寄られた。
ヒィ! 忘れていた! 私、金曜日に先輩に大変な迷惑をおかけしたのでした。
痛む左足を引きずりながら、佐々木先輩に頭を下げる。
「す、すみません、先輩! 連絡すらせずに!」
「いやいや、それもあるけど!」
廊下の壁にドンと両腕の檻。これはちまたでは有名な、壁ドンというやつですか? あれは片腕だけだと思っていましたが、両腕だと逃げられないので、確実に相手を捕獲することができますね!
「せ、先輩?」
「どうだったの、淡白荒木さんとは」
淡白荒木て。
派遣さんたちからそんなあだ名がつけられてしまった荒木さんが憐れで仕方ない。が、まぁ事実なので訂正はしない。
「……何もないですよ。だって淡白荒木さんですから」
「あぁ、やっぱりね」
「すみません、せっかくお膳立てをしてもらったのに」
「ほんとに、もう! 飲み過ぎにも気をつけなさいよ?」
はい、すみません、と背中に冷たい壁を感じながら佐々木先輩にペコペコ頭を下げる。
怖いけど面倒見の良い、頼れる先輩だ。サキタでは本当に、周りの人に恵まれていると思う。
「足、大丈夫なの? 変な歩き方していたでしょう」
「昨日捻っちゃって……でも、何とか」
電車にも乗れたし、歩いて来ることもできた。痛みは昨日よりは引いてきたし、足の痛みより、頭痛のほうが酷い。間違いなく、水森さんと湯川先生が原因だ。
「今日は部内だけで仕事しなさい。部外に出ないといけないような仕事は、私に振ってくれて構わないから」
「ありがとうございます、先輩!」
私がひょこひょこ歩くのに合わせて、先輩は歩幅を調整してくれる。本当に優しい人だ。

