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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑
「あぁ、愛されるのが怖いの?」
ビクリと体が跳ねたのを見て、相馬さんはすべてを悟ったようだ。
「なるほど。相手が本気になっちゃったかもしれない、と」
「私、体の関係だけでいいのに……」
「あかりは我儘だなぁ」
相馬さんにぎゅうと抱きつく。彼はぽんぽんと頭を軽く叩いて、背中を撫でてくれる。
「長く一緒に過ごせば過ごすほど、離れ難くなるのはわかるでしょ?」
「うん」
「男は独占欲が強いんだから、体を許した時点で心も欲しくなるに決まってる」
「……涼介も?」
相馬さんは笑う。
「世の中のすべての風俗嬢は俺の嫁だ!」
「……涼介だけだよ、そう思うの」
「まぁ、でも、体の関係だけでも恋には落ちるよ。今、俺、リョーコちゃんって子に夢中なの」
相馬さんがよく利用するところのデリヘル嬢さんだろうか。
「うまくいきそう?」
「いや、難しいね。子どもがいるからそっち優先だし、年上ってこと気にしてるし。でも、子どもと一緒にデートするのがとりあえずの目標なんだ」
「……うまくいくといいね」
ありがとーと脳天気に相馬さんは笑う。裏表のない笑顔には本当に癒やされる。
「でも、あかりは何で体だけでいいの? 何で愛されたくないの?」
「それは……」
「その答え、ちゃんと電話の彼に伝えたほうがいいよ。じゃないと、追いかけてくるだけだよ」
佐々木先輩も同じことを言っていた。
やっぱり、誠意を見せるしかないのだろうか。
「絵のモデルは昔の私です。私はサキュバスだから、精液だけが欲しいんです」と答えたら、先生は納得してくれるだろうか。
……するわけないか。
短い梅雨が終わり、夏が始まろうとしている。
「ねぇ、あかり。次はローター試してもらっていい?」
相馬さんの頭の中は、常にピンク色の春真っ盛りだ。