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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑

「あんた、翔吾以外にも大勢オトモダチがいるんだな」

 ブレンドコーヒーを二つ注文してすぐ、健吾くんは私のほうにファイルを押しやってきた。すぐ本題に入ってくれるとはありがたい。
 手に取ったファイルには「調査報告書」と明朝体でタイトルが振られており、中をめくると、私の名前が調査対象者の欄に記載されていた。
 私の本籍や略歴とともに、ここ何週間かの行動記録もある。
 つまりは、相馬さんや宮野さん、水森さんと写っている写真、彼らの素性と略歴が記載されていたわけだ。
 ……なるほど。興信所に頼んで、身辺調査がされていたのか。写真を撮られていたのは知らなかった。案外綺麗に撮ってもらえるみたいだ。宮野さんの自然な笑顔が懐かしい。

「……お金持ちって、よくわからないお金の使い方をするんだね」
「なっ」
「この相馬さんはセックスフレンド。宮野さんは元セックスフレンド。水森さんは、もう一人のセックスフレンドの友達で、体の関係はないよ。翔吾くんを含めて、今は三人セックスフレンドがいるけど、それがどうかした?」

 本当に、知りたい。
 それがどうかした? 何が悪いの? 私、何か悪いことをしている?
 だって、皆、私が「こう」だって知っていて、体の関係だけを続けてくれている。

「セッ、クス、フレ……て」
「セックスするだけのオトモダチ。もちろん、お金はもらっていないよ。援助交際でも、デリヘルの本番でもない。本当に、ただセックスをするだけの関係」
「……それ、翔吾も知っ」
「私に複数のセフレがいることは翔吾くんも知っているし、了承してくれていることだよ。問題ある?」
「……」
「聞いてくれたら教えてあげたのに。興信所に頼まなくても、別に隠しているわけじゃないんだから」

 セックスを連呼して童貞くんを動揺させる作戦は、成功だ。……性交だけに。あ、ちょっとオッサンぽい言い回しだなぁ、これ。湯川先生にならウケるかな。

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