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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑
「……モラルの問題だろ」
「特定のパートナーがいるのにセフレを作ったら、倫理的にどうかと思うけど、残念ながら私には恋人はいないし、結婚もしていないのよね」
「毎週、違う男とヤッてんじゃねえか」
「必要なんだもん。それが何か? あ、体の心配してくれるの?」
「ちがっ……!」
真っ赤になった健吾くんの前に白いコーヒーカップが置かれる。いい匂いだ。
「ごめんなさいね、今日うるさくて」
マスターの奥様だろうか、ウエイトレスのおばちゃんが店の奥を示す。そういえば、確かに喫茶店にしては騒がしい。大勢の若い子の声が聞こえる。
「担任の先生が来月結婚するから、近くの高校生たちがその打ち合わせをしているの。ご迷惑をおかけした分、お代はちょっとだけ割引いたしますね」
「あ、いえ、そんな、お気遣いなく」
むしろ、騒がしいほうが気兼ねなくこういう話ができるので、ありがたいのだけど。
しかし、顔をパッと上げたのは、健吾くんだ。
「誠南学園ですか?」
「あら、ご存知? そう、誠南の先生が結婚するの」
「俺の出身なんです。え、どの先生だろ? ご存知ですか?」
「ええ。篠宮先生と里見先生よ」
「っあー、しのちゃんかぁ!」
健吾くんは嬉しそうに笑って、すぐに口元を隠す。いや、バレてるし。隠す意味ないし。
というか、そんなふうに笑うんだ、健吾くん。初めて見たけど、翔吾くんそっくり。二人とも、笑顔はそっくりなんだ。さすが双子。
奥様が去ったあと、健吾くんは「結婚かぁ」と呟く。
「知ってる先生?」
「あ、うん。美人なのにガードが固くて、告白した男子は全滅。翔吾も好きだったと思う」
「へぇ……」
翔吾くんがねぇ。今度からかってあげなくちゃ。あ、でも、思った以上にヘコんでいたら、慰めてあげようかな。