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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑
「誠南学園と誠南大学は何か関係あるの?」
「経営者が同じ、だったかな。学園から大学までほぼエスカレーターで行けるよ。俺たちもそうだし」
「……え。二人とも、誠南大学?」
健吾くんは一瞬の間のあと、呆れたような視線と声を私に寄越してきた。
「それ、マジで言ってんの? 誠南大学だよ、俺ら」
「へぇ、そうなんだ? 知らなかった」
「覚える気がなかった、の間違いだろ?」
「……面目ありません」
そういえば、「好きな人を悦ばせたいから手ほどきしてくれ」と言ってきた童貞の男の子も、誠南大学の学生だった気がする。名前、何だったっけ。彼の本懐は遂げられたのだろうか。
「……翔吾のことは、遊びなんだろ?」
砂糖とミルクたっぷりのブレンドコーヒーを一口飲んだあと、健吾くんが消え入りそうな声で尋ねてくる。
遊び、かぁ。
セックスをするだけなのは「遊び」なのだろうか。
あぁ、違う。セックスという行為そのものが、健吾くんには「遊び」だと思われているのかもしれない。未経験ゆえに、行為の気持ちよさと行為の意義がわからなくて。
そのあたりは「生殖行為ではないセックスは不要」だと言い切った、淡白な荒木さんに似ているのかもしれない。
だとすると、私の「セックスは食事だ」という性質は、彼に伝えてもおそらくは理解されないだろう。「セックス依存症なの」と嘘をつくほうが信じてもらいやすいのかもしれない。
健吾くんに関しては「かもしれない」ばかりだ。彼の本心がわからないのが、一番困る。
そもそも、私が「翔吾くんとは遊びだ」と肯定したところで、彼に何のメリットがあるのだろうか。
……やはり、兄思いな弟、だということか?
「翔吾くんが心配なの? 遊びなら身を引けってこと?」
「そうじゃない。本気じゃないならそれでも構わない。本気にさせない程度にしろよ」
「最初からそのつもりだけど」
それは最初から言っている。皆割り切った関係なのだと。
えーと。健吾くんの、言いたいことは、何? 何なの?