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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑

「っ、あ、今の聞こえた!?」
「うん」
「聞かなかったことにしてくれ!」

 真っ赤になった健吾くんは、さっきまでの剣幕はどこへやら、慌ててアタフタしている。ただの不器用な男の子だ。
 悪くない。
 そんなふうに、表情豊かになれば、本当に、いい感じになるのに。

「自分のせいで私が翔吾くんに会わなくなったと勘違いしてこんな暴挙に出てしまった自分が恥ずかしいので……聞かなかったことにしてください、お願いします、だよね?」
「……お願いします」

 健吾くんが素直に頭を下げる。その行動にまた驚いたのだけど、彼は、元はとても素直な子なんだろう。たぶん。

「大丈夫。翔吾くんには言わないし、試験が終わったら会いに行くよ」
「……翔吾とどこで会うの」
「どこかのラブホ」

 待ち合わせてラブホテル、が一番多いパターンかなぁ。今までと同じなら。健吾くんのいるマンションでは会いづらいし、彼も私には会いたくないだろうし。

「うちに来てもいいよ。あんた……月野さんなら」

 彼は、今日何度私を驚かせたら気がすむのだ?
 私は何度も瞬きをする。けれど、何度見ても、やはり顔を真っ赤にした健吾くんが座っている。幻でも聞き間違いでもないみたいだ。

「あかり、でいいよ」
「じゃあ、あかりさん。翔吾に会うのはうちでもいい。部屋でいちゃつくのも許可する。でも、下着は……はいてくれ」
「あ、はい、すみません」

 その節は本当にすみませんでした。
 これは私が頭を下げる他ないわけだ。ほんと申し訳ありませんでした。
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