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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑

「今日は翔吾に会うの?」
「もう家に帰るよ」
「会ってやれば? 翔吾、会いたがっていたから」

 と言われましても、相馬さんから「商品開発」と称して容赦なく攻められたので、結構体はつらいんですけど。

「じゃあ、近いうちに行くよ」
「……わかった。伝えておく」

 いやいや、そこは健吾くんが寂しそうにするところじゃないですよね。恨みがましい視線を寄越さないでください。
 何? 今日来て欲しかったの? わかりづらいよ!

「……あのさ、最後に聞いていい?」
「うん? 何?」

 疑うような、迷っているような視線で健吾くんは私を見つめて。

「あんた……肩の下にほくろある?」

 ……お前もか。

 健吾くんが村上叡心を知っているわけではないだろう。叡心先生は私が言うのもどうかと思うけど、かなりマイナーな画家だったから。
 彼が溺れたときに助けてくれた、私にそっくりな恩人のことだろうか? それとも、また何か思い当たることが?
 どちらにしろ、翔吾くんに聞けばすぐわかることを私に聞くあたり、セフレの体のことなどは兄には聞けないのだろう。
 私は精一杯の笑顔を浮かべて、応えた。

「そういうのは私を裸にしたときに確認してよ」

 健吾くんの顔がさらに真っ赤になっていくのを横目でチラと見て、ブレンドコーヒーを飲む。
 あとで、翔吾くんをフォローしておこう。問題は解決したよと。

 それから、玉置珈琲館……相馬さんに会ったあとはここでコーヒーを飲もう。結構美味しかったから。
 特に、セックスをしたあとは、最高だ。
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