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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑

 翔吾くんは試験期間中、湯川先生に会うのは気が進まない、となると、宮野さんに会えなくなった今、相馬さんに会うしかないのだけれど。

『ごめん、今週末は無理! 休日出勤になっちゃってさぁ』
「あ……そうなんだ」
『ごめんね、あかり。でも、今ちょうど、あかりにアドバイスしてもらったバイブの試作品を作ってて。ほんとごめんね』
「ん、いいよ。仕事だもん。私こそ、二週も行ってごめんね。仕事頑張って」

 スマートフォンをトレイのそばにおいて、溜め息をつく。
 ……湯川先生か? それとも、ナンパする? ナンパ待ち? ネットで探す? んーっ、どうしよう?
 相馬さんの精液量でも二週間は持たない。せいぜい十日。空腹になる前……週末には精液を確保しておきたい。

 あぁ、ほんと、必要なときに素早く精液を出してくれる都合のいい男が欲しい。
 ……世の中ではそれを「恋人」というのだろうか。いや、それこそ「セフレ」って言うんじゃないのかな。

「確保……かぁ」

 一夜限りの相手はいたけれど、余程のことがない限り連絡先は交換しない。そして、セフレであっても関係が解消されたら、連絡先は消すことにしている。
 三ヶ月前のサラリーマン、半年前の土木作業員、名刺くらいもらっておけばよかった、と思うけれど後の祭りだ。

 仕事帰りに立ち寄ったチェーン店のカフェで、リプトン紅茶とチョコクロワッサンを飲食しながら溜め息をつく。何度幸せが逃げていったか、もう数えていない。

「じゃあまた明日なー!」
「おー!」

 制服を着た男の子たちが、部活帰りなのかそれぞれ飲み物を手に帰っていく。ペットボトルのほうが安上がりなのに、最近の子はカフェのコーヒーを飲んだりするんだなぁとぼんやりカウンター席から彼らを見つめる。
 私もそろそろ帰ろうかなと、チョコクロワッサンの最後の一口を頬張った瞬間だった。男の子の中の一人と目が合ったのは。

「わー、美少年」

 くしゃっとした色素の薄い髪に茶色い瞳。ハーフなのだろうか、思わず声が漏れてしまうくらい、造作の美しい少年がこちらを見て微笑んでいた。
 宮野さん、天使はここにいるよ!
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