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サキュバスちゃんの純情《長編》
第3章 迷惑な思惑
「え? こら、ちょっと」
「あかりちゃんのスマホに僕の連絡先入れてるから、ちょーっと待ってね。メッセージアプリやってる? 同期したら友達になるようにしてある?」
「え、あ、ちょっと」
「あ、大丈夫そう。僕のほうに通知来たよ」
自分のスマートフォンを確認して、ケントくんはようやくアタフタしていた私にスマートフォンを返してくれる。メッセージアプリの連絡先に「ケント」が増えている。なんてことだ。
「消さないでね」
ケントくんは笑顔のままだ。
「あかりちゃん、僕に連絡したくなるから」
「大人をからかわないでよ、もう」
「僕は大人だよ。確かめてみる?」
「……確かめません」
「そう? あかりちゃんがセックスしたそうにしていたの、僕の勘違いだった?」
あっけらかんと笑う少年に、大人であるはずの私が言葉に詰まってしまう。
確かにセックスしたそうにしていたかもしれませんけど! 確かに週末の精液のことを考えていましたけど! でも、そんな物欲しそうな顔で君を見たんじゃない!
「否定しないんだね?」
「あ、いや、だから」
「あかりちゃんとなら今からでもできるけど、する? この先にラブホあるよ」
「……制服の子は連れ込めません」
「じゃあ、週末ね。部活は土日はほとんどないし、そろそろ夏休みだから、いつでも呼んで」
待ってるから、と笑ってケントくんはメロンソーダ片手に颯爽と去っていった。窓の外で大きく手を振る彼に小さく手を振り返して、何度目かの溜め息を吐き出した。
もう次から、カフェではカウンター席に座るの、やめよう。
水森さんといい、ケントくんといい、ここは――私にとっては鬼門だ。