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おにいちゃん、おしえて。
第10章 おにいちゃんと、いっしょ。
「――あ、もしもし。……ごぶさたしてます。大島英司です。あ、はい。はい。ハハハ。ありがとうございます」

おにいちゃん、本当に電話している……。
そしてきっと、お母さんに長話を持ち掛けられている……。

清花は昔のように受話器に耳を近づけたら、英司は清花を片手で抱き寄せて、頬にキスをして離した。

「――あの、おじさんいますか」

英司の横顔がとても真剣だから、清花はそっと英司のそばを離れ、ソファに掛けた。

清花の父は、幼いふたりがセックスしていたことを、妻にも、誰にも話していなかった。
英司に釘を刺したことも、その後、英司に対してひどいことを言った、と後悔したことも。
すべて父の胸にしまっていた。
何も知らない清花には、今、英司が父に電話する理由がひとつも思い当たらない。


英司は、清花の父と挨拶を二言三言交わした後、背筋を正して座り直した。

「清花と結婚前提につきあいたいと思っています。また挨拶に伺いますが……お許しをいただいたくて電話しました」

「えっっ!?」
「え?」

清花は英司の発言に素っ頓狂な声をあげ、英司は、驚く清花に驚く。
受話器の向こうからは父の笑い声が聞こえていた。

『そうか……真剣なんだね。わかったよ。今度、二人で帰って来なさい』

――そう、温かく笑いながら。
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