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ただ、口づけに愛を込めて
第3章 (第一部) 中学生、再会
落ち着いて話せるところに行きたいな、という私の希望でカフェに入った。
ブラックコーヒーを注文した西野。
かっこつけたがるなぁ。

西野はバトミントン部とマジック研究会を兼部しているらしく、マジックを見せてくれた。

「ここに種も仕掛けもない普通のトランプがあります。確認して」

渡されたカードの束。パラパラとめくってみるが変なところはない。
光に透かしてみたが問題なし。
それぞれの厚さも均等で、変に折れ曲がったりしたものもない。
「普通のトランプだと思うよ」
はい、と渡す。

「では、このトランプを…」
裏面を上にしてスススっとテーブルに一列に広げる。
「すごい…」
ガタガタしたところはなく、綺麗に少しずつずれて並んでいる。プロ並みだ。
「この中から好きなのを一枚選んで抜いて。俺から見えないように」
なんてことないような顔をして指示する。
努力家の西野のことだ、きっと何度も練習したんだろうな。

悩んで慎重に一枚引き抜く。
残りのトランプをさっとまとめ、覚えた?と聞く西野に大きく頷く。
カードはダイヤの6。

カードを渡すとシャッフルを始めた。
流石の一言しか出ないほど鮮やかにシャッフルする。
つい見惚れてしまう。
西野の真剣な表情は、素直にかっこいいと思った。

また綺麗にスススッとカードをテーブルに並べる。
「この中でお前が選んだのは…これかな」
芝居がかった仕草で引き抜いたカード。

「嘘でしょ…」
まさかのダイヤの6だった。
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