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ただ、口づけに愛を込めて
第2章 (第一部) 出会い
「まあ、お前とは違って?ココが違うんですよー」
ふざけた表情をして人差し指で自分の頭をトントンと叩く。
ひっど、っと笑って流す。こいつが頭いいのは塾に入ったときに思い知ったし、私が西野に偏差値で勝てるのは国語くらいだ。
「まあでも国語では勝ってるから?日本語力は私の方が上かなー」
国語では絶対に負けたくない。それが私の意地だ。
「お前国語しか勝てないだろ」
そーですねーと返して、
「あと読書量とか?」
挑戦的に微笑んでみせる。
「科目から外れてるし」
「まあな」
西野は私が唯一認める読書量を追い越す可能性がある奴だ。言わないけど。私の次によく本を読んでいて、好きな作家も同じ。よくお互いが読んだ本についてのクイズを出したり、感想を言ったりしている。
「お前らほんと仲良いなー」
岩橋孝則(たかのり)。同じ塾ではないが、こいつも受験組だ。面白い奴で、ノリがいいと思えば真面目なところもあり、3人で仲が良い。
「こいつと?仲良い?ありえないねー!このお・れ・さ・まと…君が?」
「岩橋、ちょっとこいつ頭のネジ外れたからあっちいこう」
「そうだな。危ないし」
「ちょっと待ったちょっと待った。悪かったって。冗談だよ」
笑い声が響く教室。それぞれがのびのびと、生き生きと。

こんな日常が楽しかった。無理もないけれど、この時間の貴重さを幼い私は理解していなかった。

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