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甘蜜トラップ
第4章 惰性と欲求
正直、柳瀬はなにを考えているのか私にはよく分からない。追求してきたり突き放してみたり、なんだかんだ言って優しいから私はそんな柳瀬に甘えてしまうのだと思う。女子高生じゃなかったら柳瀬だって私みたいな女には構わないだろう。
車で家まで送ってもらうことになったものの、車内で私は少しだけ期待していた。
あんなことを言った後に助手席で送り届けてくれるなら、全く手を出さないなんてありえないだろうって。
それなのにこれは一体どういうことなの……後部座席って。そもそもそんなことする予定ねーんだよガキ、ってことなの? 不満だ。
「……はあ」
「ため息なんてついて、めんどくさいガキのお守りなんてさせてごめんねセンセ」
「なに、怒ってんの?」
「……怒ってないし」
「欲求不満って顔、ずっと鏡に映ってる」
「っ」
確かにルームミラーでは柳瀬の顔が確認できた。目だって合う。柳瀬も私の顔を見てたってことか。
恥ずかしい……。
すぐ顔に出すから、こんなだからガキって言われるんだよね。
「百面相か。見てて飽きないよ橘は」
「うるさい、運転して」
「してるでしょうが」
「じゃあっ」
「じゃあ?」
「私を連れて帰って」
「……」
なんで黙るの?
今日は駄目?
明日は? 明後日は?
駄目だ、こんなんじゃ、駄目だ。
「なーんでそんな焦ってんの」
「だって」
「ん?」
再びルームミラー越しに目を合わせると、柳瀬は疑うでもなく心配げに私を見ていた。怖くなって目をそらしてしまい、いたたまれなくなる。こんな私に向き合ってくれようとしているのに、私は顔を背けるんだ。
でも言えない。あいつとセックスしてるとかそんなの言えない。私が柳瀬に相談したって分かったらどうなるか分かんないし、そうなったとき柳瀬だって疑われるかもしれない。
私じゃない女子生徒ならなにも思われないところでも、私だから疑われる。
「一回だけ、柳瀬としたい」
「本当そればっかり」
「……じゃあなんで今日、」
「もういいよ分かった」