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甘蜜トラップ
第4章 惰性と欲求
暫くしてお風呂のドアが開く音がして、柳瀬もまたバスローブ姿でリビングに現れた。水も滴るいい男とはよく言ったものだ。
「今日はしてないんだ?」
首を傾げ、タオルでわしゃわしゃと髪を拭きながら厭味に口角を上げる。
「なにを?」
「それは橘が一番よく理解してるはずだけど? お前この間、俺の家でなにしてた?」
「なっ、なに、って」
顔を背けると、ちょうど電源の入っていない真っ黒の画面のテレビに私が映っていた。
「言えない?」
「分かってるくせに……」
「オナニー」
「っ」
まさか言われるとは思っていなかったため、少し驚いて柳瀬を見た。バチッと音を立てそうなくらい視線が交わって、今度はなぜかそらせなくなる。
「この場合は自慰行為の方が適切かな。一応は教師だしね」
「い、意地悪」
「そう、俺は別に優しくない。善意でお前に付き合ってんじゃないから」
「じゃあ、なんなの」
「さあ」
……やっぱ、怒ってる?
「橘、身体冷えてない?」
「暑いくらいだよ」
「そ、じゃあ溶けてなくなるかもね」
「え、」
グッと強く腕を引かれ、そのまま乱雑に寝室のベッドへと放り投げられたが、柔らかなマットレスが私を受け止めてくれて痛みなんかは全くなかった。
「やな、」
すぐに覆い被さってきた柳瀬に腕を押さえつけられ、身動きが取れない。