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甘蜜トラップ
第4章 惰性と欲求
「もうガキじゃ足りないようにしてやる」
「っ」
冷たい瞳の奥にある本心は見えない。私に対する呆れのような感情を孕んでいることは確かだろうけれど、きっと柳瀬は本当に私に呆れてしまったらこんなことに時間を割いたりしない人だ。
甘えてしまうんだよ、そういうのにつけ入って、利用しようと考えてしまうんだよ。
分かってないね。
「……家の人には電話した?」
「した」
していないけれど。
殆ど外をふらついているだけのギャンブル好きなあの父親が私を探すことなんてしない。
ここ最近は顔も見ていないし。
「そう、」
「……」
「生徒に朝帰りさせるなんて俺は教師失格かな」
「失格だよ」
ふ、と笑う。
自嘲的なのか挑発的なのか。
私が身に纏うバスローブ一枚の紐をするりと解き、布を横に落とす。露わになった身体は少し冷えて、それなのに心拍数は上昇していた。
つう、っと胸の谷間からへそまでをなぞる人差し指に身体はびくんと反応する。
ただ触られただけなのに、その触られたところが熱い……。
「綺麗な身体してんね」
「ふ、つう」
「山中先生ともこういうことしてた?」
胸の膨らみに右手を添えた柳瀬は優しく撫でる。先端には触れないよう焦らすように、形を指に覚えさせるかのように。
ああ……なんか、恥ずかしい。
「山中とはしてないよ」
「そう、良かった」
「……柳瀬、くすぐったい」
「何度言っても言うことを聞かない橘に俺は怒ってる」
「え、っ」
急に私の視界を塞ぐように柳瀬は顔を近づけ、瞼にキスを落とす。反射的に目を瞑った。
「怯えてんの」
「……ちが、」
今度はすぐに唇を重ねられ、言葉を紡ぐことは許されない。何度も角度を変えて触れ合わせるだけのキスをし、唇を舐められると少しざらついた舌の感触に思わず口を開けた。
「橘ってキスしたくなる唇してる」
「え、っ……ン」
割り込んできた舌が探るように口内を這い、口の隙間から吐息が漏れる。ふと閉じていた瞼を押し上げ、柳瀬の表情を盗み見ると長い睫毛がふるふると揺れていた。
本当、整ってる。
こんな人を夢中にできる女になれたら、私は幸せになれる? もう他の男なんて見えないくらいになれる?
あいつの顔がちらつく。
頭の中で無理矢理犯される私が浮かぶ。