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甘蜜トラップ
第2章 快楽と堕落





ーー……目が覚めると、昼だった。自宅のベッドの上。小鳥の囀りとかニワトリの鳴き声で目が覚める清々しい朝なんて一度も味わったことないけど昼前に起きるのもどうかと思う。いや、昼間に目が覚めることはそこそこある。


完全に遅刻扱いになるわけだけど、果たして進級できるのか……目覚まし、壊れてたんだっけ。てか目覚ましって三年使ってもそんな壊れるもんじゃないのに、なんで三ヶ月で壊れたんだろう。不良品?

まあいいや。


いつものことでそこそこ急ぎながら歯磨きをしてシャワーを浴びて飯を食って、昼間まで寝てたくせに寝不足な私は欠伸をしながら家を出た。


明け方まで一睡も出来ず、結局睡眠薬に頼ったわけだけど。半端に断薬しようとしたのが悪かった。本当、全く眠れない。おかげさまでいまは少し睡眠薬が身体に残っていて、半減期といえども抜けるわけではない。


瑞樹からLINEが来ていた。
《いまなにしてんの》って。お前彼氏かよ。いや彼氏でもいまなにしてんの系の質問はお断りだけど。

電話をかけると、すぐに彼は出た。
かけた私がいうのはあれだけど授業はどうした。


『もっしもし』

「テンション高くない? どうしたの」

『いやー、いや、暇過ぎてさ。響センセと俺と三年の病人先輩でババ抜きしてたらボロ勝ちしちゃってさ』

「で?」


なにそれ。
くだらない。

ていうか堂々とサボってんの? 病人先輩ってなに? 病人巻き込んでんじゃねえよ。突っ込みどころ満載過ぎなんだけど。

校門まで着いて、裏門から入ろうと考えながら電話に応える。


「おい、橘」

「……」

「逃げるな、橘」

『千歳お取り込み中?』

「いや別に」

「橘!」

『いや誰かお前のこと呼んでね?』

「……ごめん、あとでまた聞くわ」

『オッケー』


逃げようがない。
意外としつこいんだね、柳瀬。

なんで校門にいるの。




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